マイニング上がりの中古グラボを狙う

マイニング需要の急減に伴って、中古グラフィックボードがかなり安く売られています(注:2019年頃の話)。オークションで同一出品者が大量に出しているものはほぼマイニングで使われていたものでしょう。

マイニングでは24時間/日稼働でGPU使用率は常時100%という状況かと思います。このような使用状況であった中古品を買っても大丈夫なのでしょうか?

広告

中古グラボの状態

私が手に入れたグラボ(Palit GeForce GTX 1060 Super JetStream)は同一出品者が同一商品を大量に出品、かつ、冷却ファンのシールが(恐らくは熱の影響により)剥がれているという代物で、ほぼ確実にマイニングで使用されていたものでしょう。価格は税・送料込で1.6万円でした。新品の半額程度でしょうか。1年程度使用とのことでした。そのくらいならまぁ大丈夫かな、と承知の上で買いましたが検証してみます。

まずは手元での使用時の状態ですが、定格全負荷時はGPUの温度は80℃まで上がって安定します。中古だからといって何か不具合があるわけでもなく、異音もありません。

検証

PCは平日は約3時間、週末は最長で15時間程度使います。平均6.5時間/日ですが、余裕を持って8時間/日で計算します。

グラフィックボードの構成部品で寿命が早そうな代表格はコンデンサと冷却ファンです。

コンデンサ

コンデンサメーカーとして有名なニチコンが寿命目安を公開していました。

出典:http://www.nichicon.co.jp/lib/aluminum.pdf

先にGPUが80℃まで上がると書きましたが、これはGPUのセンサーの温度です。よって、コンデンサの温度では無いでしょう。ネットでグラボのサーモグラフィーの画像をみると、GPUコア付近と周囲とでは10℃程度の差があるようです。

そこでコンデンサの雰囲気温度を70℃とすると、早見表では105℃コンデンサの想定寿命は24時間/日稼働で3年です。24時間/日で1年使い込んだとすると8,760時間で残りは17,520時間。今後は8時間/日稼働とすると2,190日、つまり6年持ちます。

タンタルコンデンサは寿命設定無しなので、それを使った製品であればコンデンサ寿命を気にする必要は無いですね。

出典:https://www.rohm.co.jp/products/faq-search/faqId/301

ファン

例えば以前に購入したことのあるファンは25℃での期待寿命が40,000時間 ≒ 4.6年です。

とりあえずこれと同等とすると、こちらも24時間/日で1年間、運用時の温度が高いのでその倍の時間の消耗とみなすと、残り22,480時間。今後は8時間/日稼働とすると2,810日、つまり7.7年持ちます。

なお、ファンは壊れても取り替えが効きます。AliExpressではメーカー純正らしきものが2千円未満で売られています。

その他の特性

マイニングでは常時一定の負荷なので温度変化がほとんどありません。部材の伸縮が少ないので疲労が溜まりにくいことになります。ファンも一定回転であれば起動や回転変動の負荷がありません。

運用

マイニングはワットパフォーマンスと連続稼働が収益につながるので、パワーリミットをかけた上で電源やエアフローが安定した環境で運用されていたことが想定されます。

パワーリミットとは、定格よりも電力消費を抑えてワットあたりのパフォーマンスを向上させる設定です。長くなるので下記記事を参照。
マイニングの利益を最大に!ビデオカード設定を変更してお得に使おう

得られるハッシュレートに比べて電気代がかかり過ぎては単に温風を得ているだけのことになってしまうので、そのような設定をします。それに、グラフィックデータがないのでメモリの速度もいりません。つまりはゲーム用途よりも負荷が低く、結果として発熱も少ない。先のニチコンの資料では「温度が10℃低くなると寿命はおおよそ2倍」と書かれているとおり、温度は寿命に影響します。

車に例えると。

・ベンチマークやストレステスト
 →ドイツのニュルブルクリンクを全開で攻める

・マイニング
 →日本の高速道路を法定速度で長距離を走り続ける

・ゲームなどの一般用途
 →混雑した街中をストップ&ゴーを繰り返して短距離を走る

ハードウェアとして一番穏やかなのが、じつはマイニングです。ただし、稼働時間が長いのでそれに伴う消耗があります。

結論

ということで、稼働時間や運用が確認出来て自分の判断で割り切れればマイニング上がりのグラボは安くてうまい。

手に入れたグラボは計算上は24時間/日としてもあと2年、ゲームなどの一般用途で8時間/日とすると6年程度使えることになります。

けど、GTX10シリーズは発売からすでに3年たっているので、物理的な寿命を迎える前に商品価値の寿命を迎えてしまうかも知れませんね。

コメント

  1. gkrsnama より:

    最近、GPUチップを基盤に接着しているはんだが、熱膨張と収縮に耐えられず割れるという故障原因が主張されています。で、オーブンで焼いてはんだを再接着すれば治るともいわれています。

    マイニングは熱くなりっぱなしだから、むしろ大丈夫なのかもしれませんね。

    • 電子脳民 より:

      そうなんですよね。モーターとかもそうですけど、頻繁に入れたり切ったりするよりも入れっぱなしのほうが長持ちする気がします。

      で、4年を超えた2023年8月現在もこのグラボは現役で稼働中です。

タイトルとURLをコピーしました